井口裕章 

1979年 淡路島生まれ

1998年 大阪の服飾専門学校へ

2000年 レザークラフトを始める

2001年 神戸で師に出会い、以来13年間師事。『Fonda』として活動を始める。

2013年 淡路島で店舗を構え今に至る

 

 

私が革で物づくりを始めるきっかけになったのはハーレーというバイクでした。

 

当時はまだ、憧れているだけの服飾専門学生でしたが、大型免許を取得し、毎月ハーレー雑誌を買い、ハーレー乗りが集まるイベントへ国産車で通うほど夢中になっていました。

 

そんなハーレー乗りたちが持っていたのが、分厚いサドルレザーで仕立てられたいわゆるバイカーズウォレットと呼ばれる無骨な財布でした。

もちろん自分も欲しかったのですが、服飾学生だった当時の自分には、服に比べれば簡単に作れそうに見えたのです。

 

すぐに教本と工具、革を揃えて作り始めましたが、布地の技法とは何もかもが違い、納得のいく財布がいきなり作れるわけではありませんでした。

 

それでもなんとか初めての財布を完成させる頃には、素材としての革のおもしろさに夢中になっていました。

 

もっと革の事を知りたい。そう思った私は、電話帳の『皮革関係』の欄の上から順番に電話をかけ、『バイトさせて下さい』とお願いしまくりました。

 

そんな奇行は当たり前のように断られ続けましたが、何十件目かの電話に出た一人の女性が流れを変えてくれたのです。

 

『あんた何でこんな電話かけてきたん』

 

『革の勉強したくて、テヘッ』

 

『ふ~ん。 ほなあんた、あの人のとこ行き』

 

そうして紹介された人に、そのまますぐに電話をかけました。すると。

 

『もう今月で店たたむし今ちょうど片付けしよる最中や、わしの家まで来るつもりあるんやったら来たらええわ』

 

『行きます!!』

 

それから13年間、週に一度、その引退直後の熟練職人さんの家へ通い、朝から晩まで様々なものを作りながら厳しくご指導いただきました。

 

専門学校卒業後は、やっと手に入れたハーレー(883C)に革と工具を積み込んで淡路島から毎週通いました。

 

厳しい師匠でしたが、自分が生まれるより前から革に携わってきた生き字引のような師匠と過ごした時間は本当に贅沢な時間でした。

 

まだまだ出会った当時の師匠の年齢にも達していない自分はこれから先どんな物を作るのか、服飾時代からの自分のテーマ『本当に良いものとは何か』を考えながら革とお客様に向き合う日々です。